特集 北部病院小児科紹介

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2023年
05月17日
お知らせ

県立北部病院小児科紹介

県立北部病院小児科部長 
佐々木 尚美 先生 インタビュー 2023.4.6

経歴 名古屋大学卒業/小児科専門医/臨床研修指導医
一言
 医師という切り口から「子どもたちの生きる力が大切にされる社会の実現」に貢献したいとの思いから、ひとりひとりの子どもや家族を大切にするために、地域の連携が要ととらえて活動しています。2019年度から小児科部長に加え、医療部長という役職をつとめることになり、医師やコメディカルをはじめ、チーム医療や病院のシステムにも奔走する日々です。
力を入れている診療
一般小児科・小児腎臓・家庭支援・子ども虐待                            




質問1
沖縄県立北部病院小児科について基本的なことを教えてください。                        
佐々木先生                                                 
沖縄県立北部病院小児科はやんばる(沖縄県本島北部地域)で唯一の小児急性期病院です。ありとあらゆる疾患の子どもたちがまず当院にやってくるため、初期対応を適切におこなう必要があり、ほとんどの症例を自分たちでケアすることになります。一次から三次救急まで幅広い症例にあたり、その患者さんたちが退院したあとも、外来で主治医としてよくなっていく経過を見届けることができます。
もちろん、一部の特別専門的な治療が必要な症例は、子ども医療センターなどと連携して治療にあたっていますが、複雑な先天性心疾患の術後で
あったり、小児血液腫瘍の化学療法後などでやんばるに戻ってきたときには、急変時の対応を行うとともに、かかりつけ医師として関わる役割も担っています。
地域周産期センターでもあり、一般小児科医がNICU管理をしているため、当院では胎生32週以降の新生児に対応するようにしています。一般小児科医がNICUで対応するのは大変な一方で、生まれる前から、新生児期、そしてその後も一貫してかかわることができます。

 
 

質問2
北部病院小児科の体制について教えてください。
佐々木先生
小児科医は6人(定員 8人)ですが、私が管理職をしているため、当直は5人でシフト制を組んでいます。一人当たり平均週1-2回ですが、事情次第で調整しています。
当直は朝8:30amまでで、当直明けは遅くとも昼までには帰宅できるようにしています。
夜間、救急からの呼び出しはCOVID-19禍前から不応不急の受診を控えてもらう取り組みをすることでかなり減少していました。国の方針で令和4年11月から時間外診療にも選定療養費が必須となってからさらに時間外受診ががくっと減りましたが、これは貧困家庭に負担がかかっているのではないかと、逆に気がかりに思っています。


質問3
沖縄県立北部病院小児科の強味を一言で表現するとどのような部署でしょうか。
佐々木先生
(即答) 抜群のチームワーク、これはどこにも負けないと思っています。まず小児科医師同士、毎日どんな細かいことでも相談しあえる環境があります。重症な患者が入院した場合などでも、その主治医が孤立しないように一人一人が自分の役割を見つけ、お互いに補完しながらチームとして動くことができています。

また、ほかの診療科との敷居も低いです。ナースを始めとして多職種とも強い連携があります。
さらに、地域の子どもに関わる人たちとの強いネットワークがあります。医療の必要な子どものみならず、経済的困窮や保護者の精神状態など社会的背景にも目を向け子どもたちの「生きる力」を育むために、地域の人たちと一緒にひとりひとりの家族に寄り添う体制があります

質問4
ここ数年は地域の中核病院として、COVID-19の対応も大変だったと思いますが、その際にも地域との連携の強さが力を発揮したのでしょうか。
佐々木先生
小児科だけでなく、院内にCOVID-19対策チームが組織され病院全体が一丸となって全年齢のCOVID-19に対応してきました。小児科でいうと新型コロナウイルス抗原陽性妊婦さんが安心安全に出産でき、生まれてきた新生児も私たちの病院でケアできるように、小児・産婦人科だけでなく、手術室や救急室スタッフや感染症対策チームなども一緒に、院内全体で出産時のシミュレーションを重ねて行い、対応しました。そして、COVID-19が契機となり、これまで以上に当院と医師会や保健所などとのつながりや信頼関係が強くなったと感じています。これまでの連携があったので、COVID感染が拡大していった際にも、「我々の地域のことは、自分たちでなんとかしよう」という強い思いがあり、実際その通りに病院・地域ぐるみで感染を乗り切ったと思っています。
 

質問5
特に、北部病院小児科で地域とのつながりが他と比べて強い背景を教えてもらえますか。
佐々木先生
2000年に「ひびきの会」を立ち上げました。これは、当院小児科やリハビリ、北部保健所、名護療育医療センター、相談事業所、市町村保健師といった、医療・療育・保健関係者が定例で月1回一堂に会し、健やかな成長と保護者の安心できる生活を目的として情報交換し、円滑な連携を図るための会で、20年以上に渡り現在まで継続しています。立ち上げ当初はすべての気になる子どもや家庭について情報交換していましたが、2006年に院内虐待対策委員会が組織されたことから、現在この会は未熟児出生の児、慢性疾患をもつ児、障碍児など医療や療育が必要な児や地域が行政の体制つくりについて主に話し合っています。
また、私たちは、虐待対策委員会をファミリーサポートチームと呼んでおり、虐待を受けた症例のみならず、子どもや家族が本当に困った状況に追い込まれないように、社会的、精神的な困難さを抱えた家庭やハイリスク妊産婦さんたちのスクリーニングシステムやチームを作っています。ハイリスク妊婦さんの場合は生まれる前から小児科主治医を決め、文字通り「生まれる前からおとなになるまで」かかわる体制です。ファミリーサポートチームのケース会議は、年間100件以上行っていますが、ここでは情報共有だけでなく、家族の強みや中長期目標、それぞれの役割を確認したりしています。参加者は当院からは小児科医、産婦人科医、それぞれの看護師、助産師、MSW、外来や救急室の師長、さらに院外からは市町村の子ども担当部署や生活保護など生活困窮者担当部署、児童相談所、保健師、学校関係者、NPOや警察などで、当院は多機関連携の軸の一つとして機能していると自負しています。
2007年以前は後遺症を残すような身体的虐待ケースに、年一例以上出遭うこともありましたが、地域との連携ができた後には、私たちの地域「やんばる」では、そのような症例は全くなくなり、地道な取り組みが実を結んでいると感じています。このような長年に渡る病院と地域との信頼関係を礎に、「子どもの生きる」に地域全体で取り組む文化ができていると思います。


  • ★ひびきの会★

  • ★病棟イベント★

質問6
やんばるという地域の魅力についても教えてください。
佐々木先生
まず、人がいいです。沖縄はもともと「いちゃりばちょーでー(沖縄方言で「行き会えば皆兄弟」の意)」の精神があり県外からの人でも快く受け入れてくれる文化があると思いますが、やんばるはさらに都会とは異なる温かい人と人のつながりがあるように思います。

 


質問7
自然はどうですか。
佐々木先生
海だけでなく山でも川でも滝でも。望めばなんでもあります。特に、夜は名護市街からちょっと離れれば、星が本当にきれいで、夏の間中天の川がどーんと真上に見えますし、冬にはカノープスがはっきり見えます。ちなみに、やんばるは沖縄本島全域の水源地でもあります。

質問8
田舎にあるための不便さはないですか。
佐々木先生
生活に必要なものは基本的になんでもあります。ないものはインターネットで注文すればすぐに手に入ります。買い物のために那覇に出かける必要を感じることはありません。私は都会の喧騒が苦手なので、交通渋滞のストレスをほとんど感じずに生活できるのはありがたいです。
また、COVID19のためにweb会議が普及したおかげで学会や研修会への出席なども不自由しなくなりました。


質問9
周囲におしゃれなカフェも増えていますよね。 
佐々木先生
本当におしゃれでおいしいカフェや隠れ家的なレストランが何軒もあります。混雑するようなことはほとんどないのでリラックスできます。地産の野菜や魚肉もおいしいですし、地ビールの工場もあります。美味しい居酒屋さんもたくさんあり、呑むにも全く困りません。

 質問10
最後に、沖縄県立北部病院小児科への勤務に興味を持った医師へメッセージお願いします。 
佐々木先生

良いチームに恵まれ、また、今まで出会ってきた子どもたちや保護者の方たちからたくさんのエネルギーをもらって、私は楽しんで仕事ができています。総合的な小児科医療を担う中で、地域の子どもたちや家族の「生きる」にかかわっていきたいと感じていただける方、大歓迎です!                                                                                

                      

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